中島大地君(24期生、大学1年)の読書・書評コーナーである「大地人~大学生の読書日記」、その4。今回は、『世界共和国へ 資本=ネーション=国家を超えて』(柄谷行人、岩波新書)。.
柄谷行人は、「資本=ネーション=国家」という言葉を用いて、資本主義とネーションと国家は共犯関係にあると主張します。資本主義が力を持ちすぎれば、ネーション(民族)と国家が正して、国家とネーションが力を持ちすぎれば、資本主義が正すという体制が現在あるというのです。
ものごとを単純化してトライアングルを見出す柄谷行人のパターン化した論法が用いられています。頓挫した実践に対する反省は感じられません。基本的には、著者がこれまで積み上げてきた論理の変奏です。力を抜いて適当に読み流すのが良いのかも、と感じます。
柄谷行人は、通貨の構造を読み解き、通貨の流通が招く諸々の事態に向かい合う方法を提示しようとします。そして、たとえば、労働組合などによる権利闘争は資本主義システムに組み込まれるから無意味であると主張します。そして消費の段階において抵抗していくべきだと呼びかけます。問題を孕んだ提起です。誰もが意識的に買うものを選べば、買う、あるいは買わないという行為は積極的な意味を持ちます。ありふれた結論ですが、だからこそ、説得力があります。
ただ、大勢の人が消費者であることを自覚して行動していかなければ、選択して買う運動は力を持ちません。しかも、抵抗するためには資産が必要になります。フリーターには容易ならざる道なのです。柄谷行人の提案を実現するのは簡単ではないと感じます。
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