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世界の映画作家たち        (683)

1月~3月にかけてNHKラジオで放送された?(残念ながら私は視聴していない)、佐藤忠男の『人間のこころを描いた 世界の映画作家たち』のテキストが手元にある。



「私は映画を見ることとは世界を知ることだと思っています。(~中略~)なぜ映画を見るのかと聞かれたら、(~中略~)世界を知り、世界についてのイメージを持つことができるからだ、といまでは答えることができます。」と。

番組で取り上げられた映画作家は、ジョン・フォード、アルフレッド・ヒッチコック、オーソン・ウェルズ等英米の作家から、フェデリコ・フェリーニ、イングマル・ベリマン等の南欧・北欧の作家、そして、サタジット・レイ、イム・グォンテク、ウスマン・センベーヌ等のインド・韓国・セネガル等のアジア・アフリカの作家たちに及ぶ。

個人的な関心としては、最後のウスマン・センベーヌ監督の章が一番興味深かった。センベーヌ監督の『エミタイ(雷神)』は第2次世界大戦中実際に起きた事件を扱っている。セネガルの雷神信仰の村へフランス軍が食料の米の徴収にやって来て、抵抗してそれを拒んだ男と女たちのそれぞれの群集を虐殺してしまう話である。虐殺の凄惨な場面は出さず、最後に一斉射撃の音だけが聞こえて映画はスーと終わってしまう。そこに、佐藤はこの映画の「美的節度」を認め、心うたれたと語る。



実は、私が何よりも心惹かれるのは、著者の佐藤忠男氏である。お懐かしい、お元気で、という思い。タイトルの「人間のこころを描いた~」という箇所は、「こころをよむNHKシリーズ」だから仕方がないが、まあ、私にはちょっと照れるものがある。しかし、佐藤忠男という人物が健在であることはとても大切なことだと思っている。



佐藤忠男は、1930年生まれ。国鉄職員・電電公社社員を経て、1955年より、「映画評論」「思想の科学」編集長を務める。1962年に映画評論家として独立。1973年より、夫人と共に個人雑誌「映画史研究」を刊行。1996年より日本映画学校校長、本年、同校を前身として開校された日本映画大学の学長に就任。主な著書として『増補版 日本映画史』(全4巻、岩波書店)、小津安二郎・溝口健二・黒澤 明をそれぞれ論じた文庫・新書等がある。

また、中・高校生向けには、岩波ジュニア新書から『大人になるということ』『いま学校が面白い』が刊行されている。
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